2007年5月27日日曜日

人称代名詞とMe

知人に日本語のことを話していると、日本語に一人称代名詞が複数だと知らせれば、大抵驚いてもらえます。「なんで一つで済まないんだろう?いやぁ、日本語って難しそうな言語だな」という風に不思議がる人が多いです。確かに英語の感覚には日本語のこの特徴が案外だと言えるでしょう。英語だと、文法的な役割によって「I」か「Me」を使いますが、この二つは基本的に同じ言葉なのです。

といっても、感情的には僅かな違いがあるのでしょう。「Me」を間違えて主語として使えば、ちょっとした耳障りになります。例えば、

“Me and Billy is goin’ to the moving picture show, paw.”
(親父よ、Billyと映画館に行ってくるぜ)

というと、話し手が何十年前の田舎人に聞こえてしまいます。そのため、「Me」を下品な代名詞として避ける人もいるのです。ところが、「I」を「Me」の代わりに入れてしまうと、その逆効果が起こってしまいます。

“Whomever lost that file, it certainly was not I.”
(どな~たがそのファイルを無くしたにしろ、ワ・タ・ク・シでないことは確かですとも。)

この英文の話し手は、教育されていないのに、教育された印象を作ろうとしています。しかし、ちょっと努力しすぎなのです。丁寧に話したいから、文法を犠牲者にしてもいい、という態度です。丁寧に話すことは立派なのですが、文法をそう簡単に犠牲する人間が次の瞬間に仲間を犠牲者にするのではないか、という疑いを招くのです。丁寧すぎて、冷たい言葉遣いなのです。

従って、英語の一人称代名詞が基本的に同じなのに、アメリカには「I」と「Me」の感情的な影響を受け、その文法的な使い方を見落とす人が少なくありません。

この結論にたどり着くと、この投稿に日本語の人称代名詞について書こうとしていたことに気づきます。(話題をそう簡単に犠牲する人間が・・・)

とにかく、日本語の話は今度にとっておきますが、最後に間違えた例文を直しましょう。

“Me and Billy is goin’ to the moving picture show, paw.” (元の文)
“Billy and I are going to the moving picture show, paw.”(正確な文法)
“Billy and I are going to the movies, Dad.”(昔の田舎なまり削除)

“Whomever lost that file, it certainly was not I.” (元の文)
“Whoever lost that file, it certainly was not me.” (正確な文法)
“I’m not sure who lost that file, but I don’t think it was me” (刺々しくないバージョン)

0 件のコメント: