2007年5月9日水曜日

文学翻訳への挑戦

外国語を勉強していると、その言語を使うことが無論大切です。単語や文法形を覚えるのにそれは確かに必要なことですが、私の場合は、練習したり、ドリルを繰り返したりするだけだと、どうも物足りなく感じます。それで、勉強したくなるように、何か他の事のついでに日本語を使うチャンスを常に探しています。最近、その他の「何か」は翻訳です。

翻訳といっても、種類がいっぱいあります。プロの翻訳者の商売が経済情報や特許に集中しているそうですが、夢想家の私はどうしてもふらりと文学の方に傾いてしまうのです。長編小説を訳すのが夢ですが、まだ経験が浅いし、もっと勉強しなければいけないので、今のところでは、何か短編を英語にして、雑誌かジャーナルに発表できたらいいな、と思っております。そして、文学的な翻訳の準備と練習に取り掛かっています。

その練習の一つは、静岡州の世界翻訳コンクールでした。第六回目の締め切りは2006年の12月だったので、去年その応募の翻訳にこだわっていました。このコンクールの応募者は、指定された三つの短編と三つのエッセイから一つずつ選んで翻訳します。静岡県の政府が主催しているコンクールなので、静岡出身や静岡住居の作家の作品がコンクールの課題になります。

自信満々と飛び込んだのですが、やはり、難しかったですね。指定された図書から、古井由吉の「椋鳥」と河上徹太郎の「詩人との邂逅」を選びました。「椋鳥」の方は、暗い運命を持つ三角関係を細かく描写した作品で、その性的な内容で少しためらったけれど、古井の滑らかな文章を英語で再現するのが面白そうなチャレンジだったから、挑戦してみました。「詩人との邂逅」は、中原中也やフランスの象徴派詩人についての解説兼思い出話で、非常に勉強になると思い、選択しました。

この二つの翻訳を一ヶ月間位で完成できるだろうと考えましたが、それは大間違いでした。手をかけなかった日も多かったし、一ヶ月が二ヶ月になり、あという間に半年になり、締め切りがもうすぐでした。大慌てで最後のチェックを入れて、提出するしかなかったです。実は、翻訳に励んでいた最中は少し自信がでてきましたが、応募原稿の入った封筒を郵便に出した時、まるで封筒が手から離れた瞬間から、その自信が粉々に崩壊してしまいました。すぐに、「こうすりゃよかったんだなぁ」と後悔した語句がいくつでもありました。それでも、大きな一仕事ができたのも嬉しかったです。青春の波乱を乗り越え、社会人になり、一人暮らしを始める子供の親の気持ちに似たものかもしれませんね。

とにかく、勝つ見込みはまったくないのですが、このコンクールに応募してよかったと今でも思っています。静岡県が日本文学を諸国に伝えて、理解してもらいたいという目標は立派だと思います。しかも、翻訳者の役割をこんな風に認めて、報酬まで出して下さるのも大変感謝しています。

ところで、日本人もこのコンクールに参加できるし、翻訳言語が三つ程ありますので、外国語を勉強している日本人も挑戦してみませんか?第七回目の応募情報が2008年に発表されると思います。ちなみに、第六回目の応募結果はこちらです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして。
ブログを面白く拝見しました。
ネットサーフをしていて、
「英語道場」のページから
「とぼとぼ日本語」というこの面白い
試みを発見しました!

翻訳コンクールというのがあるんですね。
外国人にとっても、日本人にとっても、
媒介者としての洗礼を受けるにはとても
ためになるコンクールだと思いました。

最近、大修館が主催している
「みんなでつくる日本語辞典」というのが
面白いです。
とぼとぼさんの日本語は外国人の目を通して
訳されているものなので、ずっと流麗ですが、この日本辞典においては、
常識などまったく通用しないような
ユニークな日本語解釈が続出します。
どちらかといえば、女子高生の間だけでしか通用しない「暗号」めいたものが多いですが(笑)。
このブログを読んでいて、とぼとぼさんがその辞典を読まれたらどう思われるかなあと思ったので、ちょいとコメントいたしました。
ではまた。


MY SPACEは、fumie、
MIXIは小文KOFUMIです。

とぼ さんのコメント...

子文さん、はじめまして。ご訪問とコメントをありがとうございます。

この翻訳コンクールを本当にありがたく思っています。コンクールに応募するという目標がなかったら、こういう難しい文学翻訳に挑戦していなかったでしょうね。

(ところで、コンクールの結果発表が近付いてきました。期待できないのですが、やはりドキドキしてしまいます。)

大修館のページとアマゾンで「みんなで国語辞典」のことを読みましたよ。非常に面白そうな本ですね。これからも文学を翻訳していきたければ、そういう「日本語だけど、辞書にはない」言葉を理解するのが大切なんですね。

そして、女子高生の心理を理解できなくても、せめてその言葉を理解しよう、というのもあります。(^^)

嬉しいアドバイスをありがとうございます。チャンスが来たら、必ず読んでみます。

そして、どうぞ又とぼとぼ日本語にいらっしゃってください。