2007年7月10日火曜日

柔らかい日本語


日本語は言語として、柔らかさに富んでいると思います。「柔らかさに富む」という言い回しがおかしいだろうけれども、日本語は文型がわりと自由に変えられるし、外来語を容易に吸収できるし、とても柔らかい言語なのでしょう。

例えば、日本語の単語を外国語と組み合わせることがあるでしょう。しかも、二つの言葉をつなぐだけではなく、言葉の破片を組み合わせて、新しい言葉を作ることができます。

この間、椎名誠の「わしらあやしい探検隊」を読んでみましたが、印象的な文がありました。筆者が非常に疲れていたシーンに、

「全身にくたびれイズムが溢れた」

と書いてあります。記憶が正確ではないので、本に出ていた文は多少違うかもしれませんが、「くたびれイズム」という言葉をはっきり覚えています。何故か、この「くたびれイズム」は直ぐに納得できましたが、考えてみると不思議な言葉です。第一、日本語に「疲れ」や「疲労」のような言葉が沢山あるので、新語を造る必要がありません。そして、文を英語で飾りたければ、英単語を一つそのまま入れればいいです。ところが、私の鈍い日本語感覚には、椎名氏のその時の究極な疲れを表すのに、「くたびれイズム」が最適だと思います。椎名氏は、「正しいあやしさ」を大切にしている人間なので、このあやしい新語が似合うのかもしれません。

他にも例がいっぱいあります。この間テレビを観ていたら、「知るを楽しむ」に金田一秀穂氏は、日本語が視覚を重視する言語だ、と語っていました。例えば、「W杯」と書く言葉は、「ワールド・カップ」と発音する、と金田一氏が例を挙げました。又、「W不倫」と書けば、「ダブル不倫」と発音するらしいです。前者にはWの発音が、後者にWの名前が使われています。つまり、このラテン文字に、まるで漢字の音訓読みのような使い方が日本人に発見されたという訳です。念のために言っておきますが、私は不倫に(そして正直にいうとサッカーにも)全く興味がないのです。でも、この例が非常に面白いと思いました。

皆様は、日本語の柔らかさに関してはどう思っていますか?何か面白い例があれば、是非コメントを入れてください。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんにちは。以前お伺いしたchoです。記事、とても楽しく読ませていただきました。
「W杯とW不倫」は驚きました。本当ですね。さらに、「杯」に「カップ」という読み方があるはずもないのに、今まで違和感さえありませんでした。

言葉を視覚で捕らえるという意識はとても理解できます。
会話の中に、分からない言葉がでてくると、「それは漢字でどう書くの?」と良く聞くことがあります。
「しろものかでん」では何のことか分からなくても、「白物家電」といわれれば、「白い物の家の電化製品か!」とイメージできるので、とてもすっきりします。

また、本を読んでいる時も、ざざっと文字を追って、重要そうな部分だけ拾い読みすることがあるので、視覚を働かせているような気がします。

あまり他の言語を知らないので、比較はできないのですが、日本語が柔らかいというイメージはとてもわかります。
しかし、あまりいい例が思いつかないのですが…、自国の正式名称が「にほんでも、にっぽんでもいい」なんてあたりでしょうか。

日本語の柔らかさは、その成り立ちゆえなのでしょうね。
漢字という進んだ文明の文字が中国からやってきて「これはすごい!」と取り入れ、ひらがな、カタカナに作り変えていった柔らかさが、今も強く残っているように感じました。

とぼ さんのコメント...

choさん、こんにちは。また来て下さってありがとうございます。

choさんのコメントを読んで、もう二つの例を考え付きました。話が長くなるので、新しい投稿に書こうと思っていますが、考え付けたのはchoさんのおかげです。ありがとうございました。

確かに、漢字と仮名で日本語を書くという大発見がすごいことでしたね。現代の日本語学習者にとって、その三つの書き方は最初に大きな支障となるけれども、少しずつ慣れてくると、その魅力と有用性が段々と見えてきます。その段階に至ると、なんともいえない満足感と共に、こういうの、もっと知りたい、という決意が湧いてきます。(自分はその段階に至ったとは言えませんが・・・)

それでは、是非また来てくださいね。(^^)

匿名 さんのコメント...
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